工事用仮設エレベータの高精度な上下位置把握を実現
2024年7月24日
MetCom株式会社
日本電気通信システム株式会社
MetCom株式会社※1(以下 MetCom)と日本電気通信システム株式会社※2(以下 NEC 通信システム)は、鹿島建設株式会社(以下 鹿島建設)のグループ会社である株式会社 One Team※3(以下 One Team)とともに、工事用仮設エレベータ(以下 仮設 EV)の高精度な位置把握に向けた新たなソリューションの実証を行いました。本実証を通じて、MetComの三次元測位サービスであるMBS※4の垂直測位サービス「Pinnacle※5」と、NEC 通信システムのリアルタイム位置推定アルゴリズムを組み合わせ、一般的な仮説 EV に小型測位端末を後付けすることにより、仮設 EV の上下位置を高精度に把握できることを確認しました。
背景
建築現場に設置される仮設 EVは、作業員や資機材を各階に運搬するために日々フル稼働しており、現場の生産性向上に向けては、仮設 EV の効果的な運用・管理が不可欠です。より効率的な運用を検討するためには、まず仮設 EV の稼働状況を把握する必要がありますが、一般的な仮説 EV では、停止階の記録が自動作成されないため、平面における位置把握に用いられてきた電波ビーコンや IC タグ等を用いて上下位置を測位する必要がありました。しかし、たとえば電波ビーコンの場合、垂直方向より水平方向の精度を重視したものが多く、垂直移動する仮設 EV では誤差が大きくなることや、仮設 EV 側だけでなく建物側にも必要箇所にビーコンの受送信器や IC タグのリーダーを設置する必要があり、コストが増えて管理が煩雑になるほか、測位情報を集約するネットワークの構築にかかる工数やコストなども課題でした。一方、One Team が構築し、運営管理している鹿島建設のリアルタイム現場管理システム「3D K‐Field®※6」においても、人や資機材の位置情報に加えて仮設 EV の位置も把握したいニーズがあり、従来の測位方法の課題をクリアしたうえで、垂直方向の正確な位置を測位できる技術を求めていました。
今回の取り組みについて
これまで NEC 通信システムは、MetComの「Pinnacle」の屋内位置測位機能が建設現場で活用できること※7や、「Pinnacle」を元にした位置トラッカー(以下 MBS トラッカー)がリアルタイムの測位も可能であること※8を実証してきました。今回のエレベータの位置測位では、正確に測位するだけでなく、エレベータの稼働状況、すなわちエレベータの移動イベントを正確に把握するため、逐次発生する「エレベータの停止」というイベントを1単位としたデータ取得を実証目標項目の1つとしました。従来の測位方法では通常、一定間隔で測位データを生成しており、多くの場合は省電力のため1分程度の間隔で測位することが多く、エレベータの移動中に測位データを取得してしまうことや、長時間停止したままの冗長なデータが取得されてしまうことなどがあり、移動イベントの追跡に適したデータの取得が出来ていない課題がありました。
本実証では、加速度センサーを用いてエレベータ稼働状況を把握しリアルタイム測位を行う独自方式のMBSトラッカーをエレベータに設置し、エレベータの位置が変化(エレベータの稼働イベントが発生)した際に測位データを取得、分析しました。なおMBSトラッカーとの通信方法は、トラッカー自体にWAN接続の機能を持たせる場合や、建設現場に用意されたWi-Fi環境を使う方法などもありますが、今回は短期検証での扱いやすさを重視しLTEモバイルルータを活用した構成としています。
成果と今後の取り組み
本実証では、MBSトラッカーの加速度センサー及び気圧センサーから収集したデータを分析することによるエレベータの稼働イベント発生を単位とした正確な垂直方向の測位は可能であり、エレベータ稼働状況として詳細に把握可能であることが確認できました。
続いて、この垂直方向の測位データを元に推定階数へ換算した結果と、現場既存のビーコン方式による階数の推定結果とを比較検証しました。MBSトラッカー方式は従来のビーコン方式と比べ、より正確に短時間の停止階を把握できるとともに、約20%多くエレベータの停止を検知しました。また直接比較ができた残り80%のデータを分析すると、約95~97%の精度で階数推定結果が一致しました。不一致となったデータは全て1階数分の差であり、このデータをさらに高さ変化の観点で分析したところ、エレベータでの揚重荷役作業時に、エレベータを床面以外の(途中の)高さで手動停止させた場合、従来のビーコンとはその階数判定のしきい値が異なることから差異が生じているとの考察が得られました。
本実証では、「Pinnacle」を元にしたエレベータ停止階数推定方式は、建物側に測位用の設備を必要とせず高精度な測位が可能であると確認できた他、1つ1つ状況が異なる現場に対応した、より正確な結果を得られるためのチューニング方法といった知見も得られました。
今後、この新たな位置把握ソリューションを建設現場におけるリアルタイム位置測位、および仮設EVの上下位置把握の合理的な手法として広く展開していきます。また、仮設EVの積載能力や運搬する人員・資機材の量などを把握・追跡する技術と組み合わせることで、揚重計画のさらなる精緻化、最適化をサポートし、建設現場における生産性向上に向けた建設物流のDXソリューションを目指していきます。
MetComおよびNEC通信システムは、本検証などの活動を通し、時代に即した安全・安心なサービスを提供することで、建設業界のみならず、あらゆる業界のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、新たな社会価値の「共創」によりDX促進へ貢献していきます。
以上
MetCom株式会社について
MetCom株式会社は、「何が、いつ、どこで」 を可視化する、広域かつ高精度な三次元位置情報を提供する会社です。GPSの主要課題である「屋内・地下」、「垂直測位」、「セキュリティ問題」を解決し、屋外・屋内の双方でシームレスに利用可能な三次元測位サービスを提供します。本領域の世界的リーダーである米国NextNav社が主要株主になっており、同社とのパートナーシップのもとで、世界最高水準の測位サービスを実現します。我が国における安心・安全な社会と、利便性の高い市民生活を実現する社会インフラの整備・運営を目指しております。
https://metcom.jp
日本電気通信システム株式会社について
つなぐ、をカタチに。つなぐ、をチカラに。 CONNECT to the NEW WORLD
日本電気通信システム株式会社(NEC 通信システム)は、NECグループにおける通信ネットワークのソフトウェア開発会社として、世界中の超高速、低遅延かつセキュアなネットワークのインフラ構築に貢献し、安全・安心なシステム、サービスを広く提供しています。
私たちが培ってきたネットワークの技術とソフトウェア技術を基盤として、人と人が互いに熱くつながることにより、世の中の人、モノ、クルマ・・全てのものがつながる未来において、それらをより高度に、より安全につないで(CONNECT)、その上に新たな価値を創造し、持続可能かつ幸福な社会の実現を目指します。
https://www.ncos.co.jp
*1 MetCom株式会社:MBSサービス提供・普及
本社:東京都中央区、代表取締役 平澤 弘樹
*2 日本電気通信システム株式会社(NEC通信システム):位置測位ソリューション開発・システム構築
本社:東京都港区、代表取締役 社長 源 和憲
*3 株式会社One Team:鹿島建設グループの建設生産推進サポート専業会社
本社:東京都港区、代表取締役社長 伊藤 仁
*4 MBS: Metropolitan Beacon System、地上基地局による三次元測位・時刻配信サービス
https://metcom.jp/service/ (MetCom)
*5 Pinnacle: MBSのうち、先行提供している垂直測位サービス
https://metcom.jp/service/pinnacle/ (MetCom)
*6 3D K-FieldⓇ: One Teamが運営管理している鹿島建設様のリアルタイム位置管理システム
https://oneteam.inc/service/#service01 (One Team)
*7 「NEC通信システム、竹中工務店などと3次元屋内外位置測位技術(MBS)およびBIMを活用して建設DXに向けた技術実証を実施」、2022年11月
https://www.ncos.co.jp/news/news_221109.html (NEC通信システム)
*8 「NEC通信システム、竹中工務店やセンシンロボティクスと3次元屋内外位置測位技術(MBS)によるドローン自律制御に向けたリアルタイム位置測位の技術実証を実施」、2023年9月
https://www.ncos.co.jp/news/news_230913.html (NEC通信システム)
本件に関するお問い合わせ先
MetCom株式会社 広報担当
MAIL: info@metcom.jp
NEC通信システム インキュベーション本部
URL: https://contact.nec.com/http-www.ncos.co.jp_tb_products_4f854d/