L’Indro： GPSに対するロシアの脅威

Elisabeth Jeffs
2022年12月8日

イタリアの地政学サイトL’Indroは最近、GPSとGalileo信号への脅威に関する記事を書き、その中でNextNavのCEO、Ganesh Pattabiramanのロシアと衛星への脅威に関する3月のインタビューからの引用を紹介しています。以下、翻訳記事の全文をお読みください。

2月24日のロシアのウクライナ侵攻の最初の段階から、宇宙は重要な役割を担ってきました。それは、米国の衛星通信プロバイダであるViasatの地上セグメントへのサイバー攻撃と、測位、時刻、航法信号を妨害する膨大な作戦でした。最初のケースでは、宇宙を標的としたサイバー領域攻撃で、マルチドメイン作戦と同様に、その地域に存在する通信端末を機能停止に追い込み、Viasatがサービスを提供しているウクライナ軍の指揮統制能力に損害を与えました。

2回目の作戦では、国境とロシアの攻撃線に沿ってGPSとGalileo信号の精度が低下しましたが、黒海からカリーニングラード方面のバルト海に至る周辺地域でも妨害や干渉が記録され、民間航空にも影響が及んでいます。

ロシア軍はウクライナ戦争の一環として、米国の全地球測位システムからの信号を日常的に妨害しています。この信号は、偵察用ドローンの航行やミサイルの照準、携帯無線の実現など、現代戦の多くの局面を支えています。アメリカの宇宙司令部は直ちに、アメリカとヨーロッパではGPSシステムはまだ信号を変更するような攻撃を受けておらず、これは今のところ、ロシアが「まだ重要な電子戦を解き放っていない」ことを意味すると明言しました。2014年のクリミア紛争以来、ロシア軍が使用している能力ですが、内部防衛のためでもあり、例えば、ウラジーミル・プーチンがモスクワ市内を移動する時などです。

最も敏感なターゲットは航空機です。しかし航空機には妨害の試みを無効化できるアンテナがあります。他方、民間の受信機は依然として改ざんが容易です。「ロシアは世界中で定期的にこのようなことを行っています」とNextNav社のCEOであるGanesh Pattabiraman氏は振り返っています。このため、米国の海事管理局は、東地中海を航行する船舶に対して、GPS信号の劣化の可能性について警告を発しました。この信号の変化により、異なる場所や時間帯のデータが生成されてしまうのです。

紛争の最初の数週間ですでに、アメリカ宇宙軍（USSF）の報告書によると、ロシア軍は侵略された領土で電波妨害装置（専門用語ではジャマー）の使用を強化したであろうし、紛争地域から見える空の部分に、アメリカ防衛に属するシステム、Navstar-GPS群の衛星がある場合、それらをターゲットにしています。米軍の宇宙作戦の副責任者であるDavid Thompson将軍は、NBCナイトリーニュースで、「ウクライナは、ジャマーによって使用可能な信号を受信できないため全地球測位システムを使用できないかもしれない。もちろん、ロシアはGPSの価値と重要性を理解しており、他国からの利用を防ごうとしている。」と語りました。

まさに緊張が急激に増加するシナリオに直面して、ワシントン運輸省は、民間防衛システムにもっと投資するように求めています。バイデン政権は、GPSの保護を改善するために、今年1700万ドル、前年度比3倍の投資額を配分しました。

擁護団体であるResilient Navigation and Timing Foundationの代表で、GPSに関するアメリカ政府の諮問委員会のメンバーであるDana Goward氏は、ウクライナでの精密攻撃を防ぐためにロシアはもっとできることがあるだろうと考えています。まだアメリカやヨーロッパの衛星を物理的に攻撃したことはありませんが、同様のシステムであるGlonassを持つモスクワでは、その技術と能力に不足はありません。Glonassは西側のものと比べて、極域での精度が高く、熱帯や赤道域での性能は劣ります。GPSはウクライナ軍が無人機の誘導や位置検出のために自由に利用できることを考えると、キーウの攻撃の有効性を制限するためには、それを非効率にすることが不可欠になります。

ロシアは陸上電子戦のための資金を惜しまず、例えば最近のロシア軍の作戦でインマルサットやイリジウム衛星の信号を遮断した陸上移動システム「Zhitel」の開発に力を注いでいます。2020年には、より強力な通信衛星への干渉が可能な「Tirada-2S」システムがデビューしました。同じことは、レーダー衛星に干渉することができるKarushka-2および4の移動体によって行われ、Bylina-MMプログラムは、衛星の「搭載トランスポンダーの抑制」に焦点を当てているようです。2016年のモスクワ・タイムズが「クレムリンは朝食にGPSを食べる」という見出しをつけたのは偶然ではありません。一方、国営通信社スプートニクは、ロシアのEW能力は「空母を使い物にならなくする」とまで主張しました。

それにもかかわらず、ウクライナにおけるロシアのGPS干渉は、多くの観察者が思ったほどには攻撃的ではありませんでした。また、プーチンが本当に心配している敵はウクライナではないとする見方もあります。プーチンの関心は、米国とNATOにあります。このように考えると、ロシアの最も高度で強力な電子兵器をウクライナに配備することで、敵は技術や戦術を研究することができます。その結果、対抗手段が開発され、将来の紛争で兵器が効かなくなります。

しかし、今のところGPSがモスクワとキーウの戦争から取り残されているように見えるのは、他にどんな理由があるのでしょうか。ウクライナにとって重要なインフラであり、欧米にとっても同様に重要なこのインフラに対して、なぜロシアはまだ攻撃を仕掛けてこないのでしょうか。INSEEC U研究センター（OMNES Education）のESCE国際ビジネススクール教授、Serge Besanger氏に聞きました。

Besanger教授、まずabcから始めましょう。

GPSとはどのようなもので、どのように機能するのでしょうか？

当初は軍事用に設計された全地球測位システムは、国防総省に属する衛星測位システムで、民生用にも多数利用されています。物流、輸送、農業、金融、産業、防衛、セキュリティなど、今日、GPSは世界のどこにいても正確な測位を保証しています。1978年に最初のGPS衛星が軌道に乗せられ、1995年1月に全地球カバーが完了しました。今日のGPSシステムは、31機の衛星からなる衛星群に基づいており、地球上のどこにいるユーザーでも、少なくとも4機の衛星を常時範囲内に置くことができます。GPS衛星は高度20,200kmの円軌道を回っています。GPS衛星は高度20,200kmの円軌道を周回しており、一般には「Waze」などの位置情報アプリケーションで知られていますが、その用途は実に多彩です。実は、衛星には4つの原子時計が搭載されており、同期と追跡が可能で、何十億ものユーザーの基準となっています。GPSのタイミングは非常に正確なので、今や世界の産業界で重要な役割を担っています。例えば、現代の発電所は、電力需要の調整、調節、追跡、発電量の調節にこの同期を利用しています。さらに、世界の金融市場も、1日に何十億ものミリ秒単位の取引を記録するために、GPSの時刻に依存しています。

GPSシステムはいくつあり、どの国に属しているのでしょうか？

ロシア、続いてEU、そして最後に日本と中国が独自の衛星群を構築しました。それぞれ、1993年のGlonass、2011年のGalileo、2018年の準天頂衛星と北斗です。そのため、アメリカのシステムの固有名詞であるGPSという名称は、「グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム」（SMNS）と呼ばれることが多くなっています。

Elon Musk氏の「Starlink」は、GPSシステムでもあるのでしょうか？

いいえ。

なぜGPSは「脆弱なインフラ」なのでしょうか？また、どのような脅威に対して脆弱なのでしょうか？

GPS信号は、重要なインフラストラクチャを構成していますが、非常に脆弱です。まず、2022年夏の太陽フレアのような自然の脅威のために、電離層が破壊され、GPS信号の通過が妨げられます。このような嵐は、より頻繁に起こるようになってきています。実際、太陽は新しいサイクルに突入しており、その活動のピークは2025年から2026年にかけてと予想されています。大規模な太陽フレアは、いくつかの衛星を一時的または永久に動作不能にする可能性があります。それ以外にも、GPSは、妨害、ハッキング、サイバー攻撃、さらには物理的な攻撃など、あらゆる人為的な脅威にさらされています。現在までのところ、GPS衛星への物理的な攻撃の脅威はありません（ただし、対衛星兵器の急速な開発を考えると、そのようなシナリオを否定することはできません）。一方、意図的、非意図的を問わず、事故はすでに急増しています。大陸が「GPSリスク」にさらされるのを制限することを目的とした欧州のイニシアチブであるStrike3プロジェクトによると、2018年4月の1ヶ月間だけでも、欧州の主要8空港で空港通信の干渉事象が21,000件以上検知されました。このうち、1,141件は意図的な干渉と特定されました。宇宙サイバー攻撃は、停電を引き起こし、データ損失をもたらし、衛星または衛星ネットワーク全体の損失につながる可能性もあります。衛星のコマンド・コントロール・システムを制御することで、攻撃者は衛星の軌道を変更し、通信を妨害し、さらには衛星の電子機器を停止させることができる。陸上でのサイバー攻撃と同様、攻撃者は乗っ取ったサーバを痕跡を残さず利用することができます。

最も脆弱なGPSシステムとは？

衛星そのものです。

GPS衛星を強化する方法は？

GPSではなく、もともとインターネット用に作られたメガコンステレーションを使うことで、複製することが可能です。Elon Musk氏のStarlink（元Starlinks）衛星からの信号は、将来、GPSのSEとして機能するように変更される可能性があります。

あなたは「現代の軍隊、特に西洋の軍隊は、GPSシステムへの依存度が非常に高くなっている」と書かれていますね。いくつか例を挙げていただけますか？また、この依存性はメリットとデメリットのどちらでしょうか？

メリットとデメリットの両方があります。GPSシステムへの依存は、海上や空中での位置特定、ミサイル誘導、ナビゲーションに影響します。「スマート」砲弾やヒマールロケットは、その高度なGPS誘導のおかげで、数十キロから数百キロ離れた目標に2メートル以下の精度で命中することが可能であり、それはここ数週間のウクライナ砲兵による命中で実証されているとおりです。

ジャミングとは何でしょうか、どのような手段で行われるのでしょうか。

ジャミングは、その信号を混乱させるために、GPSと同じ周波数帯でより強い信号を送信することを目指しています。数十ユーロで購入でき、フーリガンの車両窃盗によく使用される装置です。民生用機器の電波到達距離は数十メートルですが、軍用機器は周囲数百キロメートルのGPS信号を妨害することも可能です。2003年の「イラクの自由」作戦では、ロシアのAviaconversiya社がイラク軍に重量8kg未満、射程200kmのGPS妨害装置を提供しました。連合軍の攻撃は、この装置を優先的に狙うほど脅威が深刻であると判断されたのです。より身近なところでは、2017年にナントで、セールスエンジニアが空港に停めた自分の車に置いてあった民生用GPSジャマーの電源を切らずにいたことがありました。このジャマーは空港の運営に深刻な支障をきたし、航空衝突の危険性があったため、国家憲兵隊が介入し、ジャマーの位置を特定して無力化させました。大陸の反対側では、北朝鮮が目的をはっきりさせないまま、韓国の民間機や軍用機に対する嫌がらせのキャンペーンを定期的に行っています。韓国航空局によると、毎月数百機の民間航空機が標的になっているといいます。GNSS（GalileoのようなGPS）からの信号はジャマーから発せられる信号に比べれば弱いので、ジャミングは基本的に比較的簡単な作業です。GPSの信号はセミが発するノイズに例えられ、その干渉ノイズはジェット機のそれに近いものがあります。

各国の「妨害」兵器はどうなっているのでしょうか？

どの国も持っています。とても簡単なことです。GPSシグナルブロッカーは、民生用で10ユーロからあります。

なぜロシアはまだGPSシステムを攻撃していないとお考えですか？

ロシアは非常に高度な対GPS装置と対衛星兵器を持っています。以前、NATOの2018年秋の軍事演習の際に、北極圏という広い地域でNATOのGPS信号を妨害したことがあります。2021年、ロシアが宇宙で衛星の1つを破壊したばかりの時、ロシアのテレビのコメンテーターは、国はすべてのGPS衛星を撃墜することによって「NATOを盲目にする」ことができると言いました。現在ウクライナでは、ロシア軍が作戦地域の一部でGPS信号を定期的に妨害しています。しかし、この妨害は一部の観測者が思うほど完全ではありません。その最大の理由は、ロシア軍自身がGPSを切実に必要としているからです。実際、GPS受信機はGlonass受信機よりもはるかに安価で使いやすく、非常に人気があります。その証拠に、撃墜されたロシアの戦闘機は、ダッシュボードに民間のGPS受信機が取り付けられていることが判明しています。GPS端末はどこでも生産されていて、値段は10ユーロです。ですから、例えばロシアの飛行士にとっては、上官がGlonass端末を見つけてくれるのを待つよりも、中国でGPS端末を入手してダッシュボードに取り付けた方が安上がりなのです。Glonass端末は非常に数が少なく、Glonassは精度が非常に低いです。さらに、ウクライナはソ連時代の兵器を大量に使用しており、電子戦の影響を受ける可能性は低いです。

あなたは、「数年前から、西側の軍隊は、衛星航法測位システムの完全かつ長期的な妨害のシナリオ、つまりGPSブラックアウトを準備してきた」と書いています。このシナリオは、具体的にどのような内容で、どのような結果をもたらすのでしょうか。

敵国は、GPS衛星群の全部または一部を破壊し、広域を封鎖しようとしています。その結果。西側諸国は、広範囲にわたって、物流、輸送、金融、防衛などのためのすべてのGPSアクセスを失うことになります。

西側諸国は、「GPSブラックアウト」に対してどのような解決策を見出したのでしょうか？

NATOの演習では、通信が著しく低下し、数週間から数ヶ月にわたってGPSが大幅に機能しなくなる環境で、高強度、速射、同時多発の紛争をシミュレートしています。西側諸国の軍隊は、戦闘能力を適切なレベルに維持するために、GPSなしでミサイルを発射したり、海上でのナビゲーションツールとして六分儀を使用するなどの代替策を検討しています。より技術的な解決策としては、西側諸国の軍隊は、地球規模のGPSとは対照的に、「劇場」での位置特定システムを構築するために、地上アンテナを使用した疑似衛星（Pseudolith）のネットワークの構築に着目しています。この種のシステムは、より優れた耐障害性を持ち、導入コストもはるかに低く抑えることができます。欧米では、Starlink型のメガコンステレーションをベースにした代替案が進められていますが、Elon Musk氏は当面これに反対しています。GPSとの冗長性を確保するために、Astro-Inertial Navigation System（ANS、仏：Inertial Navigation System Repurposed from Star Sighting）のようなかなり古いシステムも出てきています。ANSは、偵察機「BlackBird SR71」など一部の米軍機にも搭載されています。GPSに比べると精度は劣りますが、ANSは100m以内の測位と位置特定を可能にします。最後に、アメリカの公的機関であるDARPA（60年代のインターネットの生みの親）は、現在「非常に有望」とされる別の技術、ASPNに取り組んでいます。All-Source Positioning and Navigation (ASPN) です。これは、ラジオ、リピータアンテナ、テレビなどの機会信号を使用して、自分自身の位置を判定するものです。英国のARIA社も、同じ原理で「NAVSOP」（Navigation via Signals of Opportunity）というナビゲーションシステムを開発中です。

ロシアがキネティック兵器やEPR弾でGPSシステムを攻撃する可能性は排除できるのでしょうか。

いいえ、そのような攻撃は可能です。しかし、GPSはそれらにも不可欠であるため、現段階では不可能です。

ロシアがGPSシステムを攻撃した場合、NATOはどのような対応を取るのでしょうか。

「適切な対応」というのがNATOの言い分で、これ以上言いたくはないということであり、それが何であるかを特定しようとするのは無駄でしょう。

元の記事はこちら。

これは、NextNav社が発表した英語の文章を、主として機械翻訳によって日本語化したものです。
文章の大意を理解いただくために作成したものであり、用語や表現の正確性を保証するものではありませんのでご留意ください。
英語原文はこちら